発達外来
発達障害とは
生まれつきの脳の機能障害によるもので、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥・多動障害(ADHD)、学習障害などが含まれます。ASDやADHDは「スペクトラム」という考え方で、多かれ少なかれ人間みんな持っている特性ではあるのです。ただ、その特性によって日々の生活の中で何かしら困難があるのならば、低年齢の頃から丁寧にフォローしていくことが大事です。自己肯定感が下がると、不登校や抑うつなどの二次障害につながることが懸念されます。それを予防するためには、周囲の特性理解や環境調整が大切になってきますので、必要に応じて学校や園などと連携を行うこともあります(親御さんの許可なく勝手にすることはありません)。
以下の疾患の特徴が認められる場合にはご相談ください。
自閉症スペクトラム障害(ASD)とは
コミュニケーションの課題、対人面の課題、こだわり、感覚過敏などにより集団生活で困難を生じる障害です。コミュニケーションとは、お互いにイマジネーションを共有することで成立するものですが、そのイマジネーションが周囲と一致しないためにコミュニケーション上のズレが生じてしまうのです。明らかにうまくコニュニケーションが取れないお子さんだけでなく、コミュニケーションをとっているように見えて、言葉を字義通りに受け止めている、行間が読み取れない、対人距離がうまく保てない(近すぎる)といった症状も見られます。
集団生活の中でうまく協調できないことがありますが、実は本人なりの理屈があるのです。ただそれは周りには理解できないので「問題児」として見られてしまうことがあります。
また、俗にいう「HSC(Highly Sensitive Child)=繊細なお子さん」は、集団生活はうまくこなせている(ように見える)ことが多いのでASDと区別されていますが、実は頭の中で起こっていることはASDのお子さんと同じです。イマジネーションが周りとズレることで多くのお子さんにはなんてことないことが不安の引き金になり、それが無意識のストレスとなります。そして「空気を読む」ことに必死になり、疲労が蓄積してしまうのです。まずは周囲の特性理解、環境調整が必須になります。親御さんの困り感や本人の理解力などを加味しながら、必要に応じてカウンセリングなども行います。不安が強い、感覚過敏がある、イライラが強くなるなどがみられる場合は薬物療法を行うこともあります。
しかしASDには、こだわりの部分を突き詰める力があったり、多くの人が閃かないような発想を持てたりといった良い特徴もあるので、良い部分は尊重し「その子らしさ」をみんなで応援できると良いですね。
注意欠陥多動障害(ADHD)とは
多動、衝動、不注意などを認める疾患です。注意のコントロール、姿勢のコントロール、気持ちのコントロールが苦手なために集団生活や学習において困難さを認める障害です。具体的には、落ち着きがない、忘れ物が多い、短期記憶が弱いために学習が積み上がりにくい、約束や指示を覚えていられない、整理整頓が苦手、などです。特に多動が強いお子さんは、集団の中でも統制が難しいために、ASDとともに「問題児」とみられがちです。また優先順位をつけることも苦手で、思い立ったらすぐに行動してしまう、やるべきことを後回しにして好きなことや目先の利益にとびつきやすいといった特徴もあり、周囲に迷惑をかけていないようみ見えても本人が困難さを抱えていることもしばしば見受けられます。
周囲の特性理解や環境調整(集中しやすい環境を整える)、必要に応じてカウンセリングなどを行います。怠けや親のしつけの問題ではなく、本人の脳の機能障害なので、叱責は効果がないどころか、二次傷害の併発リスクをあげることになりかねません。日本でも保険適応のある薬物療法もあるので、困難さが見受けられる場合には薬物治療も視野に入れます。もちろん合う合わない個人差があるので、合わない場合には中止すれば良いのです。
ADHDには、やりたいと思ったら行動を起こす力や、好きなことへの集中力の高さなど、伸ばしたい部分もたくさんあります。社会に出たら、うまくリマインドのツールを使うなど、自分なりの工夫ができるようになれるよう、応援をしていきたいものです。
学習障害
知能が平均水準であるにも関わらず、読み書きや計算などに困難さを認める障害です。根本的な原因は不明ですが、例えば同じ読み書きの障害でも、視覚処理に課題があるお子さん、音韻認知(文字と音の結びつき)に課題があるお子さん、手先のコントロールに課題があるお子さん、眼球運動に問題があるお子さんなど、様々です。どこに課題があるのかを見極め、お子さんに合わせた支援の仕方をカスタマイズしていく必要があります。
困難を認める分野においては、実年齢や学年よりもゆっくりなレベルになっても、本人のペースで学習を積み重ねられるような学習内容が望ましいです。学校では、周りのお子さんより負担を減らす工夫やアプリなどのツールを使った学習環境にするなどの調整も大切です。
ご家庭だけでなく学校側の理解も必要になってきますので、学校との連携もご希望あれば行います。また、受験の際に個別対応が必要になる場合には診断書を作成いたします。